遺言とは,自己の死亡後,財産をどのように分配するか等について,自身の最終意思を明らかにしておくものです。
遺言がないと,財産が,民法で定められた相続人に対して,決められた割合で継承されます。
一方,遺言で,日頃特にお世話になった人等に一定の財産を与える旨書いておくと(これを法律用語で「遺贈(いぞう)」と言います。),たとえ相続人以外の人であってもこの方に財産を取得させることができます。また,後々,ご親族間に紛議が生じるのを事前に防止することもでき,遺言は有効です。
遺言の方式には,大きく分けて2つあります。「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
<自筆証書遺言>とは。
遺言の全文,日付及び氏名を自身で書くことによって,いつでも一人で作成できる遺言のことです。
費用もあまりかからず,手軽で自由度の高い遺言と言えます。
なお,平成31年1月13日からは,遺言書に添付する財産目録に限って,パソコンでの作成,登記簿・通帳等のコピー
の添付が認められています。
難点としては,関係者による破棄・改ざんの恐れがゼロとは言えないこと,相続が開始しても見つからずに発見が遅れる
恐れがあること,発見後,家庭裁判所で「検認」の手続が必要なこと等が挙げられます。
<公正証書遺言>とは。
公証人の助言・関与の下で作成する遺言のことです。作成には2人以上の証人の立会が必要です。遺言の内容について
も,専門家である公証人の助言・関与があります。遺言能力の確認も行われます。つまり,厳格な方式で作成される遺言
です。原本の保管も,公証人がしますから,信頼性が高いと言えます。
難点を挙げるとすれば,手間と費用がかかることです。(相続対象の財産に応じて手数料が変わります。)
2つのメリットとデメリット,さらには相続人となる親族・ご自身のニーズ等を考えて,使い分けていただく必要があると思います。
【自筆証書遺言書保管制度について】
昨年(令和2年)7月10日から自筆証書遺言書の保管制度が全国312か所の法務局で始まっています。
千葉県では,千葉市の地方法務本局を始めとして,他10か所(佐倉,茂原,松戸,柏,木更津,館山,匝瑳,香取,船橋,市川)の法務支局がそれぞれの管轄地域の遺言書保管所となっています。
保管所となるのは,ご自身の住居地か,本籍地,所有不動産の所在地のいずれかの法務局です。
【保管制度利用の流れ】
《遺言者のすべきこと》
1 遺言書を預ける。 (遺言書保管の申請)
↓
2 預けた遺言書を見る。(遺言書の閲覧)
↓
3 住所等に変更事項があれば,届け出る。(住所等変更の届出)
↓
4 預けた遺言書を返してもらう。 (遺言書保管申請の撤回)
《相続開始後,相続人等のすべきこと》
1 遺言書が預けられているか確認する。 (遺言書保管事実証明書の交付請求)
↓
(預けられているれば,2又は3へ)
↓
2 遺言書に記載された内容の証明書を取得する。(遺言書情報証明書の交付請求)
↓
3 遺言書の中身を見る。 (遺言書の閲覧)
↓
※ 相続人等が2の「遺言書情報証明書の交付請求」か3の「遺言書の閲覧」をしたときすべての相続人等
に対して,遺言書を保管するする法務局(遺言書保管所)から通知がされる。
↓
4 3の通知を受けたとき,他の相続人等は,必要に応じて上記2,3の請求をすることになる。